認知症になっても住み慣れた地域で暮らし続けるために 最終更新日:2025年12月8日 (ID:9130) 印刷 認知症になっても人生は終わらない!「認知症だからできない」ではなく、「できること」に目を向け、笑顔で自分らしくありつづける認知症の現状 令和4(2022)年の認知症の高齢者数は約443 万人、軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)の高齢者数は約559 万人と推計され、その合計は1,000 万人を超え高齢者の約3.6 人に1人が認知症又はその予備群という状況にあります。MCI(軽度認知障害)を知っていますか? MCIは認知症ではありませんが、将来認知症になるリスクが高まった状態であり認知症予備軍と呼ばれています。年齢相応よりも物忘れや判断力の低下がみられる一方で、日常生活には大きな支障がないため本人も周囲も気づきにくいことが特徴です。しかし、MCIの段階で発見し家族、地域との交流を絶やさず少しずつ出てきた苦手なことに対して工夫で補いながら自分で暮らしていくことで、認知症への移行や進行を先延ばしが期待できます。 MCI(軽度認知障害)とは(PDF:398.9キロバイト) 過去のイメージからの解放 認知症という言葉が身近になる中、認知症に対するイメージはどんなものでしょうか?認知症になると「何もできなくなる」「自宅に引きこもる」…といったネガティブなイメージがあるかもしれません。しかしそれは過去の話です。認知症になると苦手なことや上手くいかないことは出てきますが「できること」も多くあります。今は「できない」ではなく「できること」に目を向け、苦手があれば補う工夫をして自分らしく暮らしていけるように考えていく必要があります。変わらない生活が最高の治療薬!本人が笑顔であり続けるために家族と地域が支えるストーリー 宗像市にお住いの松下さんは3年前に初期の認知症と診断されましたが、診断から3年たった今も進行は少なく、かわりなくお一人で生活を送られています。自分らしく暮らし続けられているひけつを聞きました。 松下さん診断直後:松下さんの「はじめの一歩」 「3年前に車の運転中、同じところを何度もまわる、目的地にたどりつかないということが続き何か変だと思って病院を受診した。認知症初期と診断されたね。医師からは『一人暮らしだから包括支援センターへ相談に行き、遠方の家族にも連絡するように。』と言われ、アルツハイマーってものが何かも分からなかったからとりあえず包括支援センターに行ってみた。そこからいろんな人と出会ったね。やっぱりその中で人と話すことって大事よねって思ったよ。」と語り、社会とのつながりの大切さに気づかれました。自分らしい生活の継続:進行を防ぐ日々の活動、地域と仲間が作る安心 現在お一人暮らしで、掃除や洗濯などの家事は一人でこなされています。忘れても大丈夫なように、スケジュール帳やノートに書いておく工夫を取り入れられています。これまでの移動手段であった車も手放し電動自転車を活用しています。また、周囲の理解を得ながら仲間との活動も続けられています。松下さんは「外に出て、楽しくなるヒントや趣味を見つけるといいと思うよ。やっぱり友人の熊さんとか仲間とずっと活動しているのが力になっているからね。自分一人では成り立たない。そのありがたさで自分は安心して暮らしているし、好きな卓球やカラオケも続けられる。外に出ること、つながりがあることで進行せずにいられることに感謝ですよ。」と、力強いメッセージをくれました。ご家族の声:熊本にお住いの息子さん 「父は頑固なんですよ。やりたいことは続けたいんだと思います。認知症と診断されましたが、同じことを言うくらいで、父は何も変わらない。好きなことを続けられていて安心しています。『父は父だから』」と、息子さんのその言葉はとても印象的でした。自分らしい変わらない生活を続けることが大切です 松下さんは不安を乗り越え、軽度の症状も放置せず病院を受診しました。認知症と診断後も地域包括支援センターに相談し、友人や隣人へも状況を伝えることで理解やサポートを受け、今も変わらない自分らしい生活を送っています。家族は認知症だからという理由で何もかも制限するのではなく、本人の意向を尊重し連絡を取りながら見守っています。友人の熊さんは「まっちゃんとは長い付き合いだからね。診断されてもかわらんよ。」と語り、周囲の人が「できること」に目を向ける姿勢が本人の生活を支える力になります。自分らしく3年 松下さんの今 松下さんはこれまでの自身の経験を生かし、物忘れに対する不安や生活での工夫を語り合える場「まっちゃんの部屋」を立ち上げ、友人の熊さんらと共にチームオレンジ(認知症サポーター)としても活動し、交流の輪を広げています。「まっちゃんの部屋」 日時:毎月第1火曜日10時00分~11時30分 場所:赤間西コミュニティ・センター2階カルチャールーム(宗像市三郎丸5丁目2-24) 参加費:無料 まっちゃんの部屋で活動している 松下さん(右)と熊さん(左)認知症は早くから気づき行動することが大切です早期発見が大切 認知症は時間と共に進行する病気ですが、「できること」に目を向け、苦手なことや上手くいかないことがあれば補う工夫をして暮らしを続けることで、進行の先延ばしが期待できます。進行を遅らせるためにはMCI初期から早期に受診し暮らしの環境を整えること、周囲の理解や必要なサポートを得ることが大切です。松下さんのように気づいたときに受診や地域包括支援センターへ相談することが大切です。あなたの気づきが認知症の進行を予防するチャンス! 普段の日常生活の中で、ご自身やご家族および地域の人に対し、以下ようなサインに気づいたことはありませんか?ご本人へ 「財布や通帳など大事なものをなくしてしまうことが多くなったな…。」「曜日や日付を何度も確認しないと忘れてしまうな…。」「テレビのリモコンや洗濯機などの家電製品の操作がうまくできないな…。」「一人でいると不安になったり、外に行くのがおっくうになったな…。」ご家族の方へ 「同じことを何度も話したり、聞いたりするな…。」「いつも探し物をしているな…。」「少し怒りっぽくなったな…。」「好きだったテレビなどに興味を示さなくなったな…。」地域の人へ 「最近、外に出ている姿を見ないな…。」「挨拶や会話の様子がちぐはぐだったな…。」「買い物でいつも同じ商品をたくさん購入しているな…。」 「これらのようなサインを自覚している」「このような場面を経験したことがある」という方は、もしかしたら、MCI(軽度認知障害)や認知症初期の疑いがあるかもしれません。松下さんのように、認知症になっても進行がゆるやかで、住み慣れた場所で長く暮らしていくために、MCIや認知症初期の段階で気づいて受診や生活環境の見直し、調整を行うことが大切です。 もしもサインに気づいたら ~不安を安心に変える~ 「認知症になったらどうしよう…。」と不安になったり、悩んだりするかもしれません。そんな時は、松下さんのようにご家族や地域の人と思いを伝え合ってみましょう。そして、もしも物忘れに悩んだりできないことが増えてきて自信をなくしてしまったなら、認知症暮らしケアパスを手に取ってください。生活の工夫や一緒に行ける場所、相談の場が載っています。もし生活に支援が必要になった場合は一歩踏み出して相談に行くことも大切です。お住いの地域包括支援センターへご相談ください。認知症暮らしケアパスも配布しています。 宗像市の認知症暮らしケアパス(PDF:6.43メガバイト) ・ 地域包括支援センター宗像市では認知症の本人とその家族への支援を行っています 認知症に対する早期の支援として、認知症初期集中支援があります。認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で暮らし続けられるために、認知症の人およびその家族に関わる認知症初期集中支援チームが早期診断・早期対応に向けた支援を行うものです。 認知症初期集中支援チームを知っていますか? 認知症サポート医(医師)と医療・介護・福祉の専門職(保健師、看護師、社会福祉士など)によって構成され、認知症の疑いがある人や認知症の診断を受けた人およびその家族に対して、早期から介入し認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域で暮らし続けられることを目的に支援を行っているチームです。宗像市の認知症初期集中支援 宗像市では平成29年度から初期集中支援推進事業を実施しており、現在各地域包括支援センター(市内6か所)に認知症初期集中支援チームを配置しています。各チームに認知症の研修を受けたサポート医(医師)を1名ずつ加え、地域包括支援センターの専門職2名とサポート医1名で1つのチームを構成しています。まずはお住いの地区の地域包括支援センターへご相談ください。 【宗像市の認知症初期集中支援のイメージ図】 関連ファイル みんなで知ろう!学ぼう!身近な認知症 宗像市の認知症ケアパス(PDF:15.72メガバイト) MCI(軽度認知障害)とは(PDF:398.9キロバイト) 宗像市の認知症初期集中支援のイメージ図