「困った子は困っている子 ~子どもの隠れた悩み、のぞいてみませんか?~」家庭教育学級講演会~8月16日レポート~ 最終更新日:2026年8月16日 (ID:10256) 印刷 こんにちは、とまり木ママレポーターです。みなさんは、「実はあの時、本当はこう思ってたんだよね」といった我が子の突然のカミングアウトにドキッとしたり、「なんだ、言ってくれればよかったのに」と気が抜けたりしたことはありませんか?小学校2年生になる我が子も徐々に、過去を振り返って自分の気持ちを的確に表現・説明できる年齢になり、「あの時、実はそんなこと考えていたんだ」と気づかされることが増えました。そんな時、ふと「子どもの隠れた悩み、のぞいてみませんか?」というキャッチフレーズに惹かれ、宗像市が主催する家庭教育学級の講座に初めて参加してきました。当日の会場の様子目次家庭教育学級とは福岡県少年育成指導官というお仕事3人の事例から学ぶ、親子間のコミュニケーションの「ズレ」問題行動の背景にある見えない根っこ、だからこそ幼少期を大切に不登校の変遷と増加、その背景これから変わろうとしている学校や学びの在り方講演会後の相談の様子振り返って家庭教育学級とは今回私が参加したのは、2026年6月27日に開催された宗像市教育委員会主催「家庭教育学級第1回講座」です。この家庭教育学級は、保護者や地域の大人が、子どもの育ちや家庭教育について学ぶ機会として毎年実施されています。今年度からは年3回へと回数を増やし、子どもに関わる不安や悩みを持つ保護者が安心して家庭教育ができるよう、取り組みを強化されているそうです。とくにインターネットなど、子どもたちを取り巻く社会環境が大きく変わった今、保護者や子どもに関わる大人の「知識のアップデート」を主眼にテーマを定めて開催されています。第1回は、福岡県非行防止地域ミーティング講師であり、17年間福岡県警で少年育成指導官として非行に走ってしまった子どもたちとそのご家族の更生や立ち直りに関わってこられた泉康子さんをお招きし、「困った子は困っている子 〜子どもの隠れた悩み、のぞいてみませんか?〜」というテーマで講演が開かれました。会場には48人の市民が集まり、関心の高さがうかがえました。福岡県警少年育成指導官というお仕事福岡県警少年育成指導官が所属する「少年サポートセンター」は、警察が非行に走った子どもたちを取り締まるだけでなく、再犯を防止し、立ち直りの支援を行う警察組織の中でも少人数で専門性の高い部署だそうです。そこで働く少年育成指導官は教職員や臨床心理士、社会福祉士などの経験や資格を有した警察の専門職になります。勤務地も警察署内ではなく市民会館内で、同一フロアにある児童相談所や地域の学校とも連携し、多くの子どもたちとそのご家族の歩みを見てこられました。少年の立ち直りを多角的に支える「少年サポートセンター」の詳しい取り組みについては、下記のリンクからもご覧いただけます。福岡県警察HP「少年サポートセンターについて」(外部リンク)3人の事例から学ぶ、親子間のコミュニケーションの「ズレ」今回は家庭教育学級での講演ということで、重大な事件を起こした子ではなく、小さなすれ違いや、誰もが直面しうる出来事から非行に走ってしまった(あるいは事件に巻き込まれてしまった)子どもたちの事例が詳しく紹介されました。どれも泉さんが少年育成指導官として実際に関わられた事例です。少年育成指導官としての経験を語る講師の泉さんと聞き入る参加者1、問題行動の裏に隠されたSOS一見すると、親が手を焼く「問題行動」を起こしていたお子さんの事例です。いくら行動を止めようとしても改善しませんでしたが、時間をかけて紐解いていくと、実は過去に受けた大きな被害や傷つきを誰にも言えず、心の中でずっと苦しんでいたことが分かりました。「問題行動」は、周囲に「私の苦しみに気づいてほしい!」と必死に叫んでいた、SOSのサインだったのです。2、自転車泥棒から崩れてしまった家族関係学校では非常に真面目で、周囲からも親からも「優等生」だと思われていたお子さんの事例です。ある時、時間に追われるがあまり、思わずその場にあった自転車に乗って帰ってしまいました。その一つの行動をきっかけに親子の信頼関係がガラガラと音を立てて崩れ、家族関係から学校生活まで深刻に悪化していってしまったそうです。3、「よかれと思って」言い続けた小言の刃が引き金に親が子どもを思うがあまり、「あなたのために」と口酸っぱく毎日小言を言い続けていた事例です。親としては愛情からくる良かれと思っての行動でしたが、子どもにとっては逃げ場のない「過干渉」となり、心を限界まで追い詰めてしまいました。その結果、子どもは突発的な行動に走り、わずか数時間の間に思いもよらない事件に巻き込まれてしまうという、非常に胸が痛む結末が紹介されました。会場では、当時の状況や本人・親御さんの言葉が事細かに語られました。大人に一度不信感を抱いてしまった子どもは、わざと困らせたり、反抗したりして大人を試すような行動をとるそうです。しかし、支援者が親子に粘り強く関わり、親が自ら行動を変えていくことで、子どもたちにも変化が見られていく様子が語られました。どの事例も他人事とは思えないほど、親子間で起こるコミュニケーションのズレに共感できる部分がたくさんあり、会場には思わず目を潤ませてハンカチを手にする人が何人もいらっしゃいました。泉さんはこれらの事例を通じて、以下の3つのことを強く心に刻まれたそうです。1、子どもが問題行動を起こすのはSOSかもしれない子どもを責めたり親が傷ついたりすると、互いに心がすれ違い離れてしまう。2、大人の常識は子どもに通用しない否定から入るのではなく、まず子どもの世界観に共感することから始めよう。3、大人の言葉の裏に隠れた想いは届きにくいたとえ愛情からくるものであっても、過干渉は子どもを追い込む。ストレートな愛情を伝えよう。親が子どもに「なってほしい大人」の背中を見せるだけで十分。「行ってしまったことに対して子どもを責めると反発します。よくないことをしてしまったということは、人に言われなくても自分自身が一番よくわかっている。じっと待っていると、必ず自分で自分を責めて、心から反省するタイミングが遅かれ早かれ訪れます」という言葉が、とても印象的でした。問題行動の背景にある見えない根っこ、だからこそ幼少期を大切にすべての「困った子」は「困っている子」だった。特に困り感を抱えた時期が幼少期から小学生時代がもっとも多く、その心の傷が思春期に問題行動として見える形で噴出する現場を目の当たりにしてきた。問題行動の根っこ(原因)は、親からの虐待や過干渉による息苦しさや放置された寂しさ、また発達特性に対する周囲からの無理解や誤った指導による傷つき、中には犯罪被害が根っこになったりさまざまだそうです。問題行動の見えない根っこ(原因)を示すスライドだからこそ、「根っこが育つ幼少期の大切さを、保護者や子どもに関わる大人、社会全体にも知ってもらいたい」と泉さんは訴えます。不登校の変遷と増加、その背景ここまで「困っている子」に「困った子」のレッテルを貼らないでほしいとのお話がありましたが、同様に今、背景に着目してほしいと訴えるのが「不登校」の子どもたちです。ここでは、いじめ被害から中高一貫校で不登校になってしまったことをきかっけに、親が「受験で見返そう」と自宅で必死に応援し続けた結果、子どもが追い込まれて親や大人を信用できなくなってしまったという事例が紹介されました。もともと優等生だった彼の反発心は強く、一度崩れた親子関係や大人への信頼の修復には、多くの時間がかかったそうです。子どもを管理しようとするのではなく、信頼される大人になるためには、「親や学校、社会といった大人の側が変わらないといけないのではないか?」「不登校の子どもたちは、将来を不安視するのではなく、今のありのままの自分を受け入れてほしいと訴えているのではないか?」と投げかけ、そのために固定概念を捨て、周囲の目を気にせず頑張っている不登校の保護者の皆さんを学校や社会が温かい目で応援してほしいとお願いされました。不登校への認識の変遷を示すスライド(講師提供)文部科学省の最新データ(令和6年度調査)によると、小中学生の不登校数は過去最多の約35.4万人で、小学校で44人に1人、中学校では15人に1人と年々増えています。不登校は、かつては「登校拒否」や「ずる休み」などと呼ばれることもありましたが、現在は「学校に行きたくても行けない(環境が合わない)」子が多いことが分かり、その状態を指して「不登校」と呼ばれるようになりました。不登校と一括りに言っても、その背景には発達特性や、生まれつき感受性が強い・思考力が高い・不安が強いといった「ギフテッドや2E、HSPなど」が隠れていることがあります。そして、そういった一番困っている子どもたちの環境を整えることは、全体の環境を良くし、これからの社会を生きる力を育むことにつながるという動きがすでに始まっています。ギフテッド:突出して優れた知能や才能2E:ギフテッドと発達特性の2つの特性HSP:刺激に対して敏感で繊細な気質の持ち主これから変わろうとしている学校や学びの在り方そこで、ぜひこれからの学校が大きく変わろうとしていることを知ってほしいと紹介があったのが、「次期学習指導要領(2030年度改訂に向けた動き)」についてです。学習指導要領とは、約10年ごとに改訂される文部科学省が定めた教育課程の基準です。各教科の目標や内容、指導方法が規定され、教科書の作成や授業編成の指針になります。2030年実施 新学習指導要領論点整理よりまとめ(講師提供)そのなかで、「一人ひとりが輝く教育へ」という理念のもと、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けてカリキュラムが作られており、すでに宗像市でも現在、先行して一部の学校が45分授業から40分授業に時制を変えることで、探究学習の時間など教育環境の充実に向けた時間を確保する動きが始まっています。単に授業時間が変わっただけでなく、学校や子どもたちがいち早く時代の変化に向けて動き出していることを、保護者や地域の大人にもぜひ知って、一緒に動いてほしいと泉さん。こうして、あっという間の1時間半の講演会は幕を閉じました。講演会後の相談の様子講演の後は、数名の参加者が質問や相談に残り、一人ひとりじっくりお話をしていました。なかでも、「『困った子が困っている子かもしれない』という、やわらかい視点を地域の方が持ってくださるだけで十分です。警察沙汰などと大ごとに捉えないで、トラブルがあった時は抱え込んだり、自分たちだけで解決しようとしたりせず、気軽に警察や他の行政機関など専門家を頼ってください」と声をかけられていたのが非常に印象的でした。警察官という堅いイメージを払拭し、子どもたちに心を開いてもらおうと長年関わってこられた泉さんのお話しやすい温かな雰囲気に、質問を終えた人の表情がホッと和らいでいました。振り返ってこのような、一般の人では介入しがたい家庭内の複雑で個人的な課題に、複数の機関と連携しながら支援してくださる人が警察内にいることが大きな驚きでした。また、前半のシリアスで考えさせられる内容から一転し、後半は子どもたちの「困っている」に気づいて、学校が変わろうとしている明るくて前向きなお話が聞けたのが印象的でした。私たちが通ってきた学校のイメージとは大きく変わろうとしていることが、ちょっぴり寂しくもあり、同時にワクワクもします。今回の講演会を通じて、子どもとともに、親である自分自身もアップデートして、「信頼される大人」であると同時に「今を共に生きる仲間」でありたいなと、心新たな気持ちになりました。変化を恐れず、親も子も、大人も子どもも一緒に学び、育ち合える環境が宗像市には広がっています。次回の家庭教育講座、あなたもぜひ一歩踏み出して、参加してみませんか?(表記はレポーターの表現を優先しています)