更新日:2017年6月10日
近代部会は昨年10月に発足し、現在、明治期から昭和戦前期までの時代を対象に、史料の調査や収集を行い、部会員8人の執筆者それぞれの歴史像を持ち寄って、議論を重ねています。今回は、宗像の近現代を語る上で重要な雑誌について紹介します。
雑誌『宗像』とは?
ある地域の歴史を調べていると、他にはない現地の史料に出会うことがあります。私は宗像の史料調査を始めてそれほどたっていませんが、次に紹介する雑誌はまさに宗像を象徴するような史料だと言えるでしょう。
今から130年近く前の1891(明治24)年、東京に在住する宗像郡出身者によって「宗像郷友会」が結成され、『郷友雑誌』を創刊しました。その創刊の辞を、幕末の志士として活躍した郷土の偉人、早川勇(1832-1899)が寄稿しています。ほどなく、「宗像郷友会」は「宗像会」となり、『郷友雑誌』は『宗像』に改称しました。その後『宗像』は戦時中に休刊したあと、新たな発行者のもとで再刊し、1968(昭和43)年まで続きましたが、宗像大社発行の『宗像』へ合流することになり、約80年の歴史を閉じています。
「宗像人」の連絡帳
この雑誌は、宗像を出て異郷にいる人たちと、郷土宗像の人たちとの連絡帳のような役割をしていました。「会員消息」の欄は、東京、地方、郡地、海外に分かれていて、国内外の宗像郡出身者を結んでいたようです。雑誌そのものは、「論説」「雑事」などの欄を持ち、会員の投稿で成り立っています。会員には実業家、官僚、学者、教育者などの名前があることが分かります。最近、小説や映画の主人公のモデルとして話題になっている出光佐三も会員であり、『宗像』にいくつも投稿しています。
新たな歴史像へ
このような郷土雑誌は、全国でもまずないと言っていいでしょう。そうだとすると、『宗像』という雑誌そのもの、雑多な記事の数々から何が分かるのでしょうか。私は宗像の近代を調べるようになって、「宗像人」や「神郡宗像」という言葉を知りました。こうした言葉はいつどのようにして誕生したのか。他にも強い教育熱や宗像大社への思いを感じることがあります。この『宗像』という雑誌が、そうしたことを明らかにしてくれるのではないでしょうか。宗像の先人たちが残した雑誌『宗像』をおおいに活用して、豊かな歴史を編んでみたいと思います。
(新修宗像市史編集委員会近代部会長・時里奉明)
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早川勇肖像
『郷友雑誌』創刊号表紙
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